WINDING ROAD

在宅介護という名の過酷にして壮絶な終わりなき戦いの日々 自分の病気、ジツボとの関係 荒野に俺は一人だけ(笑)
2010年05月 ≪  123456789101112131415161718192021222324252627282930 ≫ 2010年07月
TOP ≫ ARCHIVE ≫ 2010年06月
ARCHIVE ≫ 2010年06月
       次ページ ≫

≪ 前月 |  2010年06月  | 翌月 ≫

蓮花のように 3/香典辞退

通夜開始は6時だというのに、5時前に会場入り。
せっかちと呼わば呼べ(つか、単に暑がりなだけだけど)。

いや~、しかし、正面玄関の自動ドアの内と外じゃ、快適さが雲泥の差。それは正しく、天国と地獄。
ぷーの人(浮浪者)達が、真夏と真冬に公共施設(電車、駅構内、図書館等々)に避難して来るのも、分かる気がする。

ダークスーツをびしっと着た、スタッフのお姉さんにEVに案内してもらい、いちかわ家通夜会場へ。

当然、いの一番の到着。
弔問記帳の準備も始まっておらず、いちかわの家の人達も誰もいないので、ソファに座って待っていたら、
通夜会場スタッフが奥から出て来て、いちかわ家の御家族様は只今、地階にて、納棺に立ち会われておりますが、如何なさいますかと尋ねられた。

はあ、でも、それはご遠慮します。
婆様とダンナの名代ということで、一応、ワタシも親戚なんだけど、
そんな、本来肉親だけが同席を許される場所に、婆様が居るならともかく、代理出席の親戚の嫁ふぜいの身がのこのこ出張るというのも、気が引ける。
それに、絶対、皆さん、泣いてる筈で、まだ通夜も始まっていないのに、そんな悲しい場面に、どうして好き好んで寄りたいものか。

ロビー中央に立てられた、いちかわまりこ儀通夜葬儀告別式の立派な立て看板は、真っ白い百合とピンクのカーネーションで飾られ、如何にも若い女性に相応しく、綺麗で清楚で華やかで、それがまた一層悲しさを誘う。

辛いなあと思いながら、スタッフがいれてくれたお茶を啜りつつ、その立て看板の、横の表示に初めて気付く。

「喪主様の意向により、御香典、御供物の儀は堅くご辞退申し上げます」

…は?

(最近多いらしい、このパターン)
(しかし、ワタシの交友関係ならいざ知らず)
(婆様から指示されて持参した以上、黙って引き下がる訳にも参りません)

困ったなーと思案しているところに、ポーン♪とEV到着のチャイムが鳴り、セレモニーホールスタッフが静々と押し進める白い棺を先頭に、目を真っ赤に泣き腫らしたいちかわの家の人達がロビーに入って来た。

ソファから立ち上がったものの、皆さんの沈鬱な雰囲気に、声も掛けられず、立ち尽くしていたところ、喪服姿のおばさんがワタシに気付いて下さり、

おばさん「ああ、忙しいところ、どうもごめんなさいねえ」
POTE「いえいえ、この度は、本当に、何と申し上げたらいいか…」
おばさん「急だったもんでねえ。まだ何だか、全然落ち着かなくて。それまで、割と落ち着いてたんですけど、夜中に、これはどうも危ないってことになって、急いで病院に向かったんですけど、その途中で、今亡くなったって、電話が来ちゃってねえ。結局、家の者は死に目にも会えなくって」

病院は有明。
病院としての実績もあり、最先端の治療も受けられる堂々たる高度先進医療施設だけれど、お住まいの市川から通うのに、直通電車が無い為、JRとゆりかもめを乗り継いで行かなければならず、急変時に間に合わないのも無理らしからぬところではあった。

見舞いに通うのだって、そう簡単に行ける場所ではないので、御家族は大変だったと思う。

その後、娘さん達(四人姉妹の上のお三人)が代わる代わる来て下さり、お忙しいのに、ありがとうございます、おばちゃん(婆様)如何ですか。はあ、お陰様で毎日頑張ってリハビリに取り組んでますので、当初よりは随分良くなりました と、お互いに御挨拶、

それが済むと、婆様を良く御存知の年輩の方からも、ご丁寧にご挨拶頂き、正直、後半はもう誰が誰やらよく分からなかったんだけど、ひたすらお悔やみとお辞儀を繰り返す。

最後に、漸くおじさんに御挨拶することが出来、婆様から御香典預かって来て居りますと耳打ちすると、

おじさん「あの通り(香典辞退)ですから、まあ、そういうことで」
POTE「それでは、ワタクシがお姑さんに叱られます(困)」
おじさん「それはね、私から、話しますから」

それ以上、ゴネることも出来ず、爺様名で用意した水引の立派な香典袋(うちのは印刷)はバッグに入れたまま、出番無し。

幸い、供花は直接セレモニーホールに発注したので、無事爺様とダンナの名札が付いた生花が祭壇に飾られていた。

弔問客も次第に集まり始め、義姉上も御夫君と到着。

香典辞退と聞いて、義姉上も困惑されていたが、葬家の意向とあれば致し方ない。
ただ、義姉上は供花を出していないので、結果、何も出さないのに、通夜振る舞いの食事と、引き物を夫婦で貰うことになってしまい、かなり気が引けていた様子。

供花は爺様とダンナの名前で2基出せば充分、Y子(義姉上)は嫁に行った子なんだから、香典だけ包めば充分だ というのは、婆様の采配だったのだけれど、よもや、香典辞退となるとは予想外だった。

良かったら、通夜が始まる前に、顔を見てやって下さい とおばさんから勧められ、義姉上と棺の傍に向かう。

ピンクのカーネーションと百合をアクセントにして、清廉潔白を象徴するような白菊で埋め尽くされた祭壇、にこやかにVサインするまりこさんの遺影、そして、純白の絹張りの立派なお棺に、おじさん、おばさんの、親として出来る最後の旅支度への、並々ならぬ想いを感じ、それだけで胸が熱くなる。

そして、いつか、同じ病を得た者同志として語り合い、励まし合うことが出来ると信じていたのに、その機会を永久に失ったワタシは、また一人、ガン友を送らなければならないという虚しい喪失感に耐え、棺の中に横たわるまりこさんの顔を見つめ、合掌した。

(明るい方へ行ってね)

ホールスタッフの声がかかる。
「まもなく開式でございます。御家族様、御親戚の方はお席にお着き下さいませ」



続く



ランキング参加中
よろしければクリックを
にほんブログ村 介護ブログ 在宅介護へ
拍手して下さるアナタに感謝